井村恭子 伊藤道郎「ピチカット」「タンゴ」

伊藤道郎「ピチカット」写真1(6/6,7):写真2/写真3(6/8)、「タンゴ」写真4/写真5(6/6,7,8)

「俺たちの先祖は偉かった」――1919年歌舞伎役者で初めて外遊した二代目市川猿之助の言葉として児玉竜一氏記載記事を拝読――ちょっと意味合いが違うのですが、ここ100年の現代舞踊のパイオニアの偉業を知る時、やっぱり「俺たちの先祖は偉かった」と胸のうちが竦む思いがします。

アーカイヴの企画に、師伊藤道郎の「ピチカット」「タンゴ」の2作品で参加してかけがえのないことであったと思い返しています。伊藤道郎の作品に関しては50年前、師の急逝に「消してはならない」の一心で同門会を結成し、資料保存の作業をしておりましたから振り付けに苦労することはありませんでしたが、同人以外のキャスティングは初めてのことでしたので少し戸惑いました。新しい企画では当然のことなのですが、自分自身が所謂「ミチオ流」のイメージから抜けられなくてスタッフの方々の問題児(?)になってしまいました。ピチカットの衣裳は並河万里子さんにお願いしましたが、今のナイロン系の材質ではないため“生地探しに引っ張り廻されるなんて初めて!”とあきれられたり、今にして思うところはいろいろですが、苦労話より反省話の方が多く苦笑がたえません。キャスティングは「ピチカット」をダブルキャストで時田ひとしさんと妻木律子さんに、「タンゴ」をクラシックバレエの武石光嗣さんに企画側の推薦でお願いすることになりました。

伊藤道郎の作品は、ミチオ独自のメソードとしてテンゼスチャーと云う型の制約がありますから、この辺りがきつかったのではと思います。精神面の表現が濃いソロ作品であるだけにダンサーとしては、その年代を踊るか、今を踊るか、自分を踊るか、ミチオと云うセオリーを背負って思い悩みながらの挑戦だったと思います。

その後加藤みや子先生から、諏訪市舞踊体験事業「創って遊ぼう!ダンス体験!」*で作品鑑賞としてピチカットをとお話があって、時田さんが踊って下さいました。早速のアプローチうれしいことでした。

何かが生きたDAiJ2014、舞踊史のタテ軸となるパイオニアたちの作品は、ヨコ軸となる今の時間のためにも、このような企画が継続されることを願いつつ、私自身は何を捨てて何を残すか、もう一度ミチオ作品に白紙で向き合える機会を得たことに心から感謝しています。

*研究企画部「創って遊ぼう!ダンス体験」~地域の宝をダンスで掘り起こそう~
諏訪市が世界へ!舞踊家ニムラエイイチの意志をつなぐ
2014年8月9日(土)・10日(日)於:諏訪市文化センター(主催:長野県諏訪市)

 

 

日時
2014年6月6日(金) 開演19:00
2014年6月7日(土) 開演15:00
2014年6月8日(日) 開演15:00
会場
新国立劇場 中劇場
チケット
A席 5,400円 B席 3,240円
主催
新国立劇場
出演者
時田ひとし(6,7日:ピチカット)/妻木律子(8日:ピチカット)/武石光嗣(6,7,8日:タンゴ)

伊藤道郎「ピチカット」「タンゴ」

作品責任者:井村恭子

ダンス・アーカイヴ in Japanに参加して