第32回(平成26年)江口隆哉賞 授賞者決定のお知らせ
2015.02.23
第32回江口隆哉賞授賞者が勅使川原三郎氏に決定しましたのでお知らせいたします。
【受賞のことば】
諸先輩先生の皆様が、若輩の私を江口隆哉賞に推薦してくださいましたことに喜びとともに感謝します。
受賞の知らせは意外な驚きでした。ダンスを始めてすでに40年以上経ちますが、いわゆるダンス界の方々との直接の付き合いはほとんどなかった私は、いつも異端で少し厄介な存在であったのではないでしょうか。私がダンスを始める直前の頃、1972,73年に故若松美黄さん(現代舞踊協会前理事長)の「とんつくとんとん」という緩んだ身体とリズムの無意味なすっとぼけたダンスに軽やかな心地よい衝撃を受けたのが初めてのダンスでした。その時、自分自身に対して息苦しかった若者が、不安定で地に足がついていなくてもなんとかなるもんだぞ、と勇気づけられた気がしたのは事実です。
亡くなられる数年前に若松さんとお会いする機会に恵まれましたが、次に出会えるだろう天国で一緒に踊らせてもらえるようなダンスを用意しておきます。
勅使川原三郎(撮影:稲垣徳文)
※江口隆哉賞
わが国における現代舞踊の振興と協会の繁栄に尽力した故江口隆哉元会長の功績を記念して、1983年に制定されたもっとも権威ある現代舞踊賞です。毎年1月1日~12月31日までの期間、優れた現代舞踊作品を創作発表した作者に対し、過去の実績を加味し授与しています。
第32回江口隆哉賞選考委員
舞踊評論家 山野博大(選考委員長)、舞踊評論家 池野 惠、舞踊評論家 稲田奈緒美、文芸評論家 三浦雅士、一般社団法人現代舞踊協会副会長 池田瑞臣、同常務理事 金井芙三枝、同常務理事 正田千鶴、同常務理事 野坂公夫、同理事長 花輪洋治
一般社団法人現代舞踊協会制定 第32回江口隆哉賞 勅使川原三郎
撮影:阿部章仁
- 受賞理由
- 舞踊の根源と革新への探求を絶え間なく継続し、特に「空時計サナトリウム」において優れた成果をあげた。ダンスカンパニーKARASを主宰しながら国内外での活動を続け、傑出した才能は既に高い評価を得ている。それでもなお、舞踊の根源と革新への探求は留まることなく、大劇場からスタジオ公演まで充実した活動を行っている。特にブルーノ・シュルツの短編を舞踊化するシリーズにおいて、研ぎ澄まされた言葉と身体を対峙、あるいは共振させて豊かなイマジネーションを広げ、新しい舞踊の時空を作り上げた。(稲田奈緒美)
- 略歴
- ダンサー、演出家、振付家。1981年より独自の創作活動を開始。1985年以降、自身のカンパニーKARASと共に世界中に招聘され公演を行う。既存のダンスの枠組みに捉えられない新しい表現を追求している。呼吸を基礎にした独自のダンスメソッドと、照明・美術・衣装・音楽も自ら手がけ、光・音・空気・身体によって空間を質的に変化させる独創的な作品は世界中で高く評価されている。近年は、パリ・オペラ座バレエ団等の他カンパニーへの振付や、フェニーチェ歌劇場等からのオペラ演出などの創作依頼も多数ある。