第41回(令和5年) 江口隆哉賞 授賞者のお知らせ

2024.07.23

第41回江口隆哉賞授賞者が 天児牛大氏に決定しましたのでお知らせいたします。

天児牛大

(C)Shintaro Shiratori

 

《受賞の言葉》
受賞の知らせを受け取る前に旅立った天児に代わり、評価して頂いたことに心より御礼申し上げます。天児と共に山海塾を設立して49年になります。稽古場を持たず、アカデミズムのバックグラウンドも無く、明日の保証も無いままに招聘されて世界各国で公演してきました。天児は「永遠の航海」と呼んでいました。端から見ると楽しそうに見えることも有ったと思いますが移動を繰り返す中での作品発表は困難なものでした。作品が評価されるにつれ共同制作者や協賛企業も現れ活動を続けることによってメンバーが真摯に作品に向き合うようになりカンパニーが強固なものとなっていったと思います。
天児の病気や新型コロナ禍で山海塾にとって苦しい時が流れていましたが、それでも作品発表を続け最後の作品となった「TOTEM-真空と高み」の受賞は生死を超えた天児の意思を感じます。永遠の航海とは時空を超えた精神世界へ向かう芸術の前衛ではないでしょうか。この受賞に恥じぬよう天児の意思と共に山海塾の活動を続けようと思います。                                        (2024.07.01 蟬丸)

 

※江口隆哉賞
わが国における現代舞踊の振興と協会の繁栄に尽力した故江口隆哉元会長の功績を記念して、1983年に制定されたもっとも権威ある現代舞踊賞です。毎年1月1日~12月31日までの期間、優れた現代舞踊作品を創作発表した作者に対し、過去の実績を加味し授与しています。

第41回江口隆哉賞選考委員
舞踊評論家/池野 惠、立木燁子
一般社団法人現代舞踊協会/同常務理事 加藤みや子、坂本秀子、同理事 馬場ひかり、同理事長 野坂公夫

一般社団法人現代舞踊協会 第41回 江口隆哉賞 天児牛大


天児牛大「TOTEM 真空と高み」 (C)Sankai Juku

受賞理由
1975年、舞踏カンパニー、山海塾を設立。世界各国で、極めて高い評価を得ている。2023 年8月30日~9月3日に世田谷パブリックシアターで上演された「TOTEM 真空と高み」は、2023年3月に北九州芸術劇場との共同制作により初演された新作。独自の舞踊言語を用いた身体表現と洗練された造形的な美しさは圧倒的で、人間の内的本質に迫り、時空を超越した普遍的な世界を壮大に描く。4つに区切られた空間とその中央に立つオブジェが、静謐な、あるいは重低音の響く狂騒の仮想空間を創出し、舞踊手は、生命のエネルギーを沸き立たせ、生と死を超えた崇高な精神の美を、身体から浮かび上がらせる。人・自然・宇宙への深い洞察と豊かな感性により生み出された秀逸な作品である。また、長年にわたりカンパニーを率い、極めて芸術性の高い作品を国内外で発表し続けてきた功績を賞賛する。
略歴
1949年横須賀市生まれ。山海塾主宰・振付家・演出家・舞踏家。
1975年に山海塾を創設。1980年に初めての世界ツアーを行う。1982年以降、パリ市立劇場を創作の拠点とし、また2005年からは北九州芸術劇場の共同制作も加わり、新作を発表。これまでに世界48カ国で上演。1997年よりオペラの演出も手掛け、ペーター・エトヴェシュ指揮によるバルトークのオペラ『青ひげ公の城』を東京国際フォーラムで上演。また同氏の作曲による新作オペラ『三人姉妹』(フランス・リヨン国立歌劇場)を演出、本作はフランス批評家協会最優秀賞を受賞。2008年に同氏作曲による新作オペラ『Lady SARASHINA』を演出、同作は再びフランス批評家協会最優秀賞を受賞。そのほか、バニョレ国際振付コンクールの審査委員長、トヨタ・コレオグラフィー・アワードの審査委員長を務める。『遥か彼方からの―ひびき』がイギリスで最も権威ある舞台芸術賞である第26回ローレンス・オリヴィエ賞の「最優秀新作ダンス作品賞」受賞。平成15年度芸術選奨文部科学大臣賞を舞踊部門にて受賞。『時のなかの時―とき』が、第6回朝日舞台芸術賞グランプリとキリンダンスサポートをダブル受賞。紫綬褒章受章。国際交流基金賞受賞。フランス政府より芸術文化勲章コマンドール章受章。第27回フローレンス国際ダンスフェスティバル「飛翔するマーキュリー」賞受賞。「重力との対話-記憶の海辺から山海塾の舞踏へ」を岩波書店から出版。